good-bye, hi-lite.

恋とニコチン。

2.9

2月に入ったとたん歯が生え始めて、サーモンピンクの柔い歯茎にまっしろな、かたい、とてもちいさな、宝石みたいな歯の欠片が埋まっている。まるで宝探しをしているような気分で、指の腹で何度もそっと触ってみる。
今日で生後5ヶ月になる。離乳食を始めてみる。

10分粥をすり鉢ですって糊状にしたものを、小さなプラスティックのスプーンですくってひとさじ。
唇の上にのせた粥はミツの舌の上にふんわりと溶けていったが、彼にとってはじめての食べ物は単なる異物だったのだろう。
ちっともおいしそうじゃなかった。

そうだね。たべるということは時にとても卑しい行為だ。
食べねば生きていけないなんて、生きものでなければよかったと私は何度思ったことだろう。
10分の粥はミツに与えられた生きものとしての最初の呪いであり、最初の祝福だったんだ。
これもまた「しかたのないこと」なんだと思う。