2.27
おとといはあんなにいい天気だったのに昨日の夜からざんざん降りの雨で、どうせ降るなら雪が降ってしまえばいいのに、生きてるものがみんな硬く硬く縮こまって眼だけ爛々光らせて、一面の白が音なんか吸収してしまって凍り付いた空気はそよぎもしない、そんな中で誕生日を迎えたかったのに、
と思う。
買ってもらった桃の花はあっという間に満開になってしまって、そのことももはやおもしろくない。
春が近づくと本当に不愉快になる。
いつまでもいつまでも秋と冬だけでいいような気がする。
多分私は生命というものに腰が引けているのだ。全身で熱を発しながら汗ばんだ手を伸ばしてくるようなものに巻き込まれるのは鬱陶しいと。
私のそんな捩じれた感情なんて置いてきぼりにして、ミツは隣で眠っている。生命の塊が。
お前の弱い自意識なんてどうでもいいとばかりに、熱い寝息をたてている。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2007/09/01
- メディア: 単行本
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角田光代の本を読もうと図書館に行ったらたまたまこれしかなくて借りてきた。
「やらわかいブラジャー」ってなっていて、誤植なんだろうけど、「やらわかいブラジャー」ってどんなんだろうとぼんやりした。やたらわかいにも読める。
妊娠してもちっとも喜べなかったし、ずっとじりじりしていたというのはそんなに珍しい事ではないみたいだ。「もう既に生きているものを殺してしまいたくない」という感情だけで私は出産したと思う。