4.9
ちいさな身体を捩るようにして悶えながら何度も目を覚ます。
夜泣き、が始まったみたいだ。
私も合わせて眠れずにいる。頭蓋の内側がじりじりと焼け付くように痛む。不眠の痛み。
「春のせいじゃないか」
「そうなの?」
「うん。春は残酷な季節なんだろう?」
「そういう詩人がいたね」
「季節そのものと身体が無媒介につながってしまうんだ。成長というのははっきりしない痛みのことなんだろう?」
「春もいたんでいるということね」
「たぶんそう」
「春のいたみは永遠に癒えることがないのかしら」
「だから残酷なんだとおもう」
「ミツは?」
「うん。いたい」
ミツはそう言って絞るような声を上げ始めた。春に向けて開かれた裸形の唇に、私は乳房を差し入れた。強引に。
*
- 作者: 東浩紀
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SFだと思って読んだ。
すべての平行世界において基本的な家族の構成要素はまったく変わらないということが地獄だと思ったのだけど。
- 作者: 阿部和重
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