good-bye, hi-lite.

恋とニコチン。

dialogue

6.1

ある朝、私とミツの目の前で、巣立ったばかりのちいさなちいさな小鳥が猫に喰い殺された。 からだのそこここに和毛が残り、まんまるい黒ボタンみたいな眼も横に広がったうすいくちばしも、ようやくヒナから脱したばかりの幼さを見せていた。まだぜんぜんうま…

4.9

ちいさな身体を捩るようにして悶えながら何度も目を覚ます。 夜泣き、が始まったみたいだ。 私も合わせて眠れずにいる。頭蓋の内側がじりじりと焼け付くように痛む。不眠の痛み。「春のせいじゃないか」 「そうなの?」 「うん。春は残酷な季節なんだろう?…

1.25

窓際に抱いて連れていくと、ミツが窓ガラスを小さな手で叩く。「この向こうにある風景をおまえは信じているのか?」 「信じる?」 「在る、ということをだ」 「さあどうだろう。判らない。存在していると思っていなければやってられないからね」 「ニエプス…

1.22

彼の眼球に最初に触れた光のことを思う。最初に聴いた雨音のこと、最初に頬を撫でた風のこと。 それらは少しも特別なものではなく、日々のありきたりな事象にすぎなかったはずだが、しかしおそらくそれらは「事件」だった。 まぶしさが痛みだということを彼…