7.20
外に連れていくと、ミツはいつも風をつかまえようとする。
ずいぶん伸びた手足をさらにのばして、空の端まで指の限りに。
ちいさなてのひらに緑と蒼のにおいを含んだ風が柔らかくあたり、丸くかたまって指の間をすこし舐めて、きらきら散らばりながらもう一度指と指に絡まってすりぬけていく。それを不思議そうにミツが見ている。
両腕を夏草のようにぴんとはって風に向かう彼の背中の、肩甲骨の確かさはすでに少年のものだ。
木漏れ日が瞳を刺すのがおもしろくてしかたがない。
ひとつの葉とすべての葉が縫い合わされたり編み込まれたり、そうしてもう一度解きほぐされたりするのが悲しいような気がする。
夏というものを初めて呼吸した。
蚊にさされた跡が、ゆでたまごのような肌に醜い地図をいくつも残してしまう。
これも夏だとおもう。
ああ、風が吹いているよ。このつめたくてあたたかくて、やわらかくとがったものの声を聞きたいと思うよ。
ミツや、ミツ、こっちにおいで、こんなに汗をかいて。
夏風にあそぼうって言っといで!