good-bye, hi-lite.

恋とニコチン。

5.3


なしくずしの死〈上〉 (河出文庫)

なしくずしの死〈上〉 (河出文庫)


がらくたはこわれやすい。ぼくは故意にじゃなく山ほどの商品を駄目にした。骨董品は今でも胸くそが悪い。だがそれでぼくたちは喰ってたんだ。陰気なもんだ時代の残滓ってのは……しけ臭い、見苦しい。好もうと好むまいと、ぼくたちはそれを売っていた。かもに嘘八百を浴びせかけて……大変な掘り出し物ですよ……慈悲もへったくれもあったもんじゃない……なんでもかんでも言いくるめちまう……相手の良識を封じちまうんだ……相手はルイ十三世様式の茶碗をポケットに、柔らかい紙に包んだ羊飼娘と猫の透かし織りの扇子を手に、ぼーっとなって出て行く。こんながらくたをうちへ持って帰る大の大人どもがぼくにはどんなにうとましかったことか……

自戒を込めつつも、いわゆる「骨董好き」の「目利き」諸子にたいしてF**K YOU.


たぶんきっと、夢中になって我を忘れたこどもみたいな大人というのは、(ほんとの)子供にとって「うとましい」んだろうね。